電車での移動時間、
空港の待ち時間、
予定をドタキャンされてぽっかり空いた2時間、
台風や大雪で新幹線が立ち往生してしまった数時間、
連休明けでやたら混んでる病院の待ち時間、

こういうの、大好きだねえ(笑)

落ち着いて読書できる貴重な時間なので。



先日、やっと読めたのがこの本。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井 紀子
東洋経済新報社
2018-02-02



2011年に「ロボットは東大に入れるか?」という実験的なプロジェクトが始まったんだけど、

結論が出たらしいよ。


「東大は無理でした。MARCHなら入れます」


計算問題や世界史の用語を答える系は得意なのに、

文章を読んで意味を理解する、いわゆる「読解力」が人工知能にはまったくなかったんだって。

コンピュータは「意味」を理解しないんだね。



というのが、この本の内容の半分。

ここまでは「そりゃそうだよね」という人も多かったかもしれない。



それより重大なのが、この本の後半。


「高校生の読解力が、人工知能以下だった」



もう少し詳しくいうと、
「文の意味」ではなく「単語」だけ見つけて答えを出そうとするコンピュータみたいな読み方をする生徒が大半で、教科書すら正しく読めていない。


そうそう! 国語を教えている現場の感覚はまさにその通り!

勉強が苦手な人って、単語だけ拾うよね。

漢字の熟語だけを点々と見て、間のひらがな(助詞)をスルーする。

だから「幕府が大名に命令する」も「幕府に大名が命令する」も同じに見えてしまう。



運転免許の学科試験で何度も落ちる人も、原因は知識不足ではなく国語力だ。

「前の車が右折の合図を出しているとき、その車を追い越すには右側の車線に進路を変える」

おいおい、ぶつかるから!

国語力がないと、「〜とき」とか「〜ならば」という条件の部分をスルーしてしまう。

これは教本の内容を暗記するような話じゃない。
読んで車の動きをイメージすればわかる話だ。




ところが、高校や予備校の「国語」の時間にこんなことを教わる機会はまずない。

だって現代文の問題ってこうだもんね。


傍線部アとはどういうことか、答えなさい。
現代文2



同じ内容が、ほら、ここに書いてありますね。

ここをまとめれば正解です!

現代文3




・・・って、それは視力検査ですから!

同じ内容を拾ったら、ただのオウム返しですから!

理解とかロジックとか不要ですから!




東大クラスでは難易度を上げる。

さあ、これができたら視力2.0☆ みたいな。

現代文4






実際は、これで「問いと論理的に噛み合う解答」にはならないんだけど、予備校では視力検査的なオウム返し答案が「正解」とされている。

その理屈は、「これでそこそこ受かってるから、いいじゃん」



「そんなのは読解力じゃない! 大学が求める国語力じゃない!」

と代ゼミ時代に主張して、模試やテキストの解答の見直しを提案したりしたんだけど、

同業者にはほとんど理解されなかったなあ(涙)



よしそれならと、参考書という形で世に問うてみた。



公務員試験 無敵の文章理解メソッド
鈴木 鋭智
実務教育出版
2017-04-19



でも、日本の国語教育を揺さぶるほどの影響力は・・・なかったなあ(涙)

(小論文のルールを変えた『小論文のオキテ55』のようにはいかなかった)




そんなわけで、学校での国語教育を半ば諦めて「社会人のためのビジネス国語」という仕事にシフトしてみたら、

こっちの方が明らかに需要あったよ。

単語だけ拾って判断する人って、仕事では危険だもん。

売り上げにも生産性にも直結するので、企業は社員の教育にお金をかける。これは投資だ。




それでいまではすっかり企業研修とビジネスセミナーが本業になってしまったんだけど、

この本を読んだら学校教育って世界にちょっと希望が見えてきた。

国語教育の風向きが変わるかもしれない。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井 紀子
東洋経済新報社
2018-02-02