以前、訳あって期間限定でアップしていた内容なんだけど、最近また要望が増えてきたので再アップしよう。
AO入試、大学のゼミ、就職活動などでプレゼンをする人は参考にどうぞ。




理想的な説明のための「3D」の法則


 「自分は説明が苦手だ」と思っている人は多くの場合、苦手意識を持ってしまうような何らかの失敗を経験しているものだ。「好きな人に想いを伝えられなかった」、「あと一歩のところで商談がダメになった」など、状況はさまざまでも、説明が上手くいかない事例は大きく分けて三つのタイプに分類できる。

1 話を聞いてもらえなかった。
2 「わからない」と言われてしまった。
3 結果的に契約など相手の行動につながらなかった。

 たとえば聴衆が居眠りを始める、私語でざわざわする、というのは1である。こんなとき、話し手は疎外感を感じて精神的にも辛い。特に学校の先生は毎日生徒の居眠りやおしゃべりと戦っているようなものだ。
 ではなぜ聞いてもらえないのか。それは「この話は聞く価値がある」と思われていないからだ。本当は価値があったとしても、である。言い換えると、「他のつまらない話と同じ」という先入観が原因だ。学校の生徒が先生の話を聞かないのも、「またいつもの説教かよ」と思っているからである。
 ならば、「他の話とは違う」ということをはっきり伝えれば、相手の関心を引き、話の輪郭を明確にすることができるはずだ。

 また、説明したのに相手がポカンとした顔をしていたり、「わかりました」と言っていたのに実は大きな誤解をしていた、というのは2にあたる。場合によっては「君の話はさっぱりわからん」と話を打ち切られるという、1と2の合わせ技を喰らうこともあるだろう。
 これは多くの場合、途中の詳細を省略したため、つながりが見えなくなったことが原因である。原因を言わずに結果だけ言ってしまったり、誰のことなのか主語を言わなかったりすると、聞いている方は混乱する。
 これを避けるためには、必要な詳細をちゃんと伝える努力が必要になる。世の中では「いかにコンパクトかつ刺激的に表現するか」というコピーライター的な才能に価値を置く風潮もあるが、実際は必要な情報を漏れなく伝える能力の方がビジネスマンとしては必須である。

 3は営業や販売の仕事をしているとよくあることだ。ビジネスにおける説明のほとんどは、伝えて終わりというものではない。契約なり購入なり、相手が行動を起こして初めて成功と呼べる。それなのに、〝お得意様〟に毎回商品説明をするばかりで契約に至らないという営業マンは多いものだ。
 これは、相手に求める行動をはっきり示していないことに原因がある。ズバリ「買って下さい」と言わなければ、相手はこちらが「買ってもらうため」に説明しているとは察してくれないものなのだ。「あの人は随分親切に説明してくれるけど、買えとは言わない。良心的な人だねえ」と思われていることは意外に多い。
 そこで、「これからどうして欲しいのか」ということを明示する必要がある。営業の世界ではこれを「クロージング」と呼ぶ。

 以上をまとめると、確実に聞いてもらい、わかってもらい、行動してもらえる説明は次の三点を備えたものということになる。

1 Difference 他との対比
2 Detail 具体的な詳細
3 Development 次への展開

 他との対比(Difference)を述べることで相手の関心を引き、具体的な詳細(Detail)を述べることで理解させ、次への展開(Development)を述べることで相手の行動を引き出す。これが、説明上手な人が無意識にあるいは意識的にやっている技術、「説明の3D」である。

 3Dには「三次元、立体」という意味もある。そう、「説明の3D」は単に細かく説明するというだけではなく、説明に広がりや厚み、奥行きを持たせる技術でもあるのだ。
 この図を見てほしい。

説明の3D





 Difference、Detail、Developmentの三つをそれぞれの座標軸にすると、説明のどの要素がどれだけ含まれているかが一目でわかる。

 テレビのグルメ番組を例に、プロのレポーターがどのように3Dを使っているかを見てみよう。

 「うわー、このチョコレート美味し〜い! 超美味しい! 激ウマ〜!」

 これは駆け出しのタレントがやってしまう、素人同然のコメントだ。「美味しい」も「超美味しい」も「激ウマ」も、全く同じ内容を繰り返しているに過ぎない。これでは美味しさが伝わらないし、「バカタレントが騒いでいる」と見られるだけだ。
 この状態を3Dの図で表すと次のようになる。

下手なレポート




 具体性も何もないため、コメントは広がらない。話の内容は狭い一点のままだ。

 これが、プロのグルメレポーターになると違う。グルメレポーターといえば、「口の中がイナバウアー!」のような奇抜なキャッチコピーばかり言っているような印象があるが、実はそうではない。奇抜なコピーを言う前に、彼らは必要な3Dをしっかり押さえているのだ。

 「チョコレートケーキというと『甘すぎる』というイメージがありますが、ここの店は違うんです。ちょっとビターで後味がさっぱり」

 まず、他店の商品とは違うことをアピールする。図で表すとこのようになる。

対比のみ






 さっきまで点に過ぎなかった説明が、対比によって幅を持つことがわかる。ゼロ次元から一次元になるのだ。

 レポーターはさらに続ける。

 「実はこのチョコレートケーキ、使用しているチョコがなんとカカオ七〇%、かなり苦いです。その生地にオレンジピールを練り込んで爽やかな風味を出しているんですね」

 「ビターでさっぱり」がどういう味なのか、材料を具体的に説明することで聞き手が想像できる。図にするとこうなる。

対比+具体性






 Difference(対比)の横軸にDetail(具体性)の縦軸が加わることで、話の内容は面の広がりを見せる。二次元である。

 そして、レポーターは締めのコメントに入る。

 「赤ワインにもぴったり。大人のデザートとして、いかがですか?」

 一番大事なのは「このチョコレートケーキを買ってくれ」というメッセージだ。ここでは「どんなシチュエーションで食べてほしいか」というイメージを描くことで購買欲をそそっている。ここまで来ると、図は奥行きが加わって立体となる。

対比+具体性+展開




 これがプロの説明だ。クロージングを見事に決めることによって、三次元の広がりを持った話ができる。対比と具体的詳細で聞き手を引きつけ、納得させていればいるほど(DifferenceとDetailの面積が大きいほど)、展開・クロージングを仕掛けた時の効果は大きい。グルメレポーターだけではなく、トップセールスマンやテレビの人気司会者たちも、意識的にあるいは無意識に3Dに広がる話し方をしているものだ。

 このように、Difference(対比)、Detail(具体性)、Development(展開)の三つを上手く盛り込むと、説明の内容は飛躍的に充実する。それも「三倍」ではない。「三乗」だ。次章では、三つの軸それぞれについて、より詳しいノウハウを紹介しよう。



仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」 [単行本]
著者:鈴木 鋭智
出版:中経出版
(2013-06-14)