眠れるライオンもたまには起きるっ

『何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55』著者の鈴木鋭智が受験生を励ましたり冷やかしたり・・・

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感染症は世界史を動かす「感染症は世界史を動かす」
  岡田晴恵  ちくま新書
  難易度 ☆☆☆
1347年マルセイユに上陸したペスト(黒死病)はヨーロッパ全土を死体の山と化した。医学のない時代、祈っても無力な教会に民衆は絶望、宗教改革につながっていく。1493年コロンブス一行が持ち帰った梅毒の大流行はイギリス人の性意識を変え、純潔を重んじるピューリタン(清教徒)を生み出す。そして1918年アメリカ兵がヨーロッパに持ち込んだスペイン風邪は…。みんなも習った世界史を「疫病」という観点から再検証。貧困や戦争などの社会情勢が感染症の猛威を誘い、逆に感染症の惨劇が社会に大変革をもたらす。らい菌からインフルエンザウイルスまで、歴史を動かすのは人間様の野心やイデオロギーだけじゃないんだね。

逆説の日本史「逆説の日本史」
  井沢元彦  小学館文庫
  難易度 ☆☆☆☆
歴史好きは絶対はまる。卑弥呼の死因から源氏物語が書かれた目的、源義経が殺された本当の理由まで、定説を覆す珍説奇説のオンパレードだ。しかしただのトンデモ本と異なるのはその説得力。従来の歴史学における手法の欠陥を指摘し、史料に「書いてあること」ではなく「なぜこう書かれたのか」を分析していく。特に名前の付け方から天皇の死因や天皇家の本当の系譜までを解明していく過程は目からウロコ落ちまくり。歴史分野以外でも「文系の学問はこうやるもんだ」というお手本でもある。

ソロモンの指環「ソロモンの指輪」
  コンラート・ローレンツ著   早川文庫
  難易度 ☆☆
ノーベル賞学者の書いた本では一番面白いかもしれない。著者は鳥のヒナが生まれて初めて見た相手を自分の母親と思い込む「刷り込み」現象を発見したことで有名な動物行動学者。ハムスター、ガン、トゲウオ、カラス…自宅で放し飼いにされたさまざまな動物たちの恋愛模様や親子関係は、擬人化せず科学的客観的観察に徹しているがゆえにリアルで笑える。しまいには鳥や犬の言語を習得してしまうドリトル先生並みの著者。でも一番頑張ったのは家中動物だらけにされても長年耐え続けた奥さんだろう。

エコノミックアニマルは褒め言葉だった「『エコノミック・アニマル』は褒め言葉だった 誤解と誤訳の近現代史」
  多賀敏行   新潮新書
  難易度 ☆☆☆☆
外国からどう見られているかを過剰に気にするドMな日本人。そもそも「日本の常識は世界の非常識」という竹村健一の日本人批判自体、世界の平均を気にした発言だから始末が悪い。そこでこの一冊。外交官を長年勤める著者が「エコノミックアニマル」「ウサギ小屋」といった有名な“辛口日本人批評”の最初の出典を調べ上げ、発言者の本当の意図を明らかにするという快著。「引用」と「誤訳」によって発言が本来の文脈から切り離され、意味が変わっていく過程を解き明かす。マスコミ志望者必読。

 小論文の添削をしていて一番頻繁に書き込む言葉、「もっと具体的に」。
 初心者の文章に一番欠けているのが「誰が、何が、何を」という具体性だ。こざかしい表現技法なんか覚えるより、とことん詳しく具体的に書く訓練をした方が確実に点数は上がるはず。

 「高校ではサッカー部に在籍し、精神力を養いました」

 精神力とは何だ? 辛くても我慢することか、ピンチになっても動揺しないことか、甘い誘惑を拒み自分を律することか。
 さらに、実際にはどんな経験があってそれらを身に付けたのか?

 「高校ではサッカー部に在籍しました。地区大会ではロスタイムでの逆転勝ちを三度も経験したため、ピンチに陥っても動揺せず、楽観的に打開策を考えようとする思考がチーム全員に身に付きました」

 具体的に書くと、第一に信憑性が増す。そして第二に字数が増える。
 書くことがなくなって苦し紛れに関係ない話を継ぎ足したりするときは、大抵その前の部分で具体的な記述が足りないときだ。

 初心者のうちは、とにかく詳しく細かく記述する努力をした方がいい。ダラダラと長ったらしい部分は添削で削られるかも知れないが、説明不足で「意味不明」などと減点されるよりはよっぽどいい。実際に何度も書いているうちに、必要な記述と無駄な部分の区別はついてくるものだ。(その辺のバランスについては別な機会に詳しく解説しよう)

 最近は小論文もパソコンで書いて持ってくる高校生が増えているが、入試のことを考えると普段から手書きの方がいい。手書きは体力が要る。だからパソコンに慣れている人が急に手書きになると、疲れるのでついつい言葉を省略してしまう傾向があるのだ。その結果、具体性に欠けた薄っぺらい文章になってしまう。入試本番は手書きだ。使いやすい筆記具を見つけて、手書きで詳しく書く体力をつけよう。

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