眠れるライオンもたまには起きるっ

もともと国語講師・鈴木鋭智が受験生を励ましたり冷やかしたりするブログでしたが、最近はアシスタントが近況をお伝えしています。

「本当は聞こえていたベートーヴェンの耳」

82527b43.jpg「本当は聞こえていたベートーヴェンの耳」
  江時 久  NTT出版
  難易度 ☆☆☆☆
ベートーヴェンといえば、「耳が聞こえないのに数多くの名曲を残した大天才」「女好きだったわりに晩年は孤独だった」「激情的でキレやすい」等々、さまざまな伝説を持つ謎多き人物。だが一体どんな種類の聴覚障害だったのだろう。著者は自身の難聴体験からベートーヴェンの耳は「ピアノの音は聞こえるが人の声が聞こえない」という「あぶみ骨固着」による難聴だと推理。この仮説から彼の行動を検証すると、数々の「奇行」の本当の理由、難聴者にしかわからない社会との軋轢が見えてくる。そして「第九」に込めた本当の想いも。音楽史を塗り替えたのみならず、現代社会においても理解されにくい聴覚障害者の声を代弁する貴重な一冊でもある。

「原子爆弾」

bf17b64d.jpg「原子爆弾」
  山田克哉  講談社ブルーバックス
  難易度 ☆☆☆☆☆
爆弾マニアにとってはバイブル。原爆開発の歴史から原子爆弾の仕組みまで、呆れるくらい詳しく詳しく記述している。核分裂発見の9カ月後に第二次世界大戦が勃発するという不思議なタイミングにただの偶然以上の何かを感じるのは俺だけか。開発に関わる科学者が多すぎて、時々ページを戻らないとわからなくなるが、これ一冊読むとウラン濃縮、遠心分離器、軽水炉、プルトニウムなど最近のニュースで耳にする用語がパーフェクトに理解できる。北朝鮮やイランで何が起こっているかがよくわかる。

「安楽死のできる国」

3c19e1b2.jpg「安楽死のできる国」
  三井美奈   新潮新書
  難易度 ☆☆☆☆
マリファナも売春も同性愛結婚も合法という不思議な国オランダ。何と『公営売春宿』なんてものが存在する。そのオランダが世界で初めて安楽死を合法化したのは2001年。しかし単なる自由至上主義ではなく、自分の人生は自分で決めるという徹底した個人主義とイデオロギーに縛られない現実的思考の伝統があるから。「安楽死って何?」という基本的な知識から、安楽死先進国が経験した新たな問題まで網羅している。現在法的には認められていない日本の安楽死のこれからを考える際の参考にどうぞ。

「性同一性障害」

74071903.jpg「性同一性障害」
  吉永みち子  集英社新書
  難易度 ☆☆☆☆
ホモネタって、笑いをとるために時々使っちゃうけど、この本読んだらもう笑いのネタにはできないな。日本で初めて医療行為として行われた性転換手術を中心に、「体の性と心の性が違う」という性同一性障害患者の実像に迫る。「親のしつけが悪い」などの偏見を持たれやすいこの病気だが、体の性と心(脳)の性が胎児の発育段階ごとのホルモンバランスで決まっていくプロセスが明快に解説されている。性転換が「医療行為」として認められることにも納得。そして社会の無理解には…心が痛くなる。

「共生の意味論 バイキンを駆逐してヒトは生きられるか?」

bd92b8b0.jpg「共生の意味論 バイキンを駆逐してヒトは生きられるか?」
  藤田紘一郎  講談社ブルーバックス
  難易度 ☆☆☆
著者は寄生虫研究の第一人者。フィラリア病という風土病の調査に関わった話に始まり、病原を突き止めて寄生虫がヒトの免疫機構に関与するメカニズムを解明していくプロセスが順を追って描かれており、素人でも大変わかりやすい。15億年前のミトコンドリアの登場から最新モードのエイズウイルスまで、「寄生」いや「共生」が特定の生物の特殊な生態なのではなくあらゆる生命が生きていくカタチであることを説いている。面白いのは宿主体内でのウイルスや寄生虫の振る舞い。他のウイルスを邪魔したり宿主と上手い関係を保ったり、人間社会とソックリなんだよな。学ぶこと多し。
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